米海兵隊岩国基地の地元・山口県岩国市で１２日、米海軍厚木基地（神奈川県）の空母艦載機受け入れの是非を問う住民投票が行われ、反対４万３４３３票、賛成５３６９票で反対が圧倒的多数を占めた。反対票は有効投票の８９％に上り、有権者の過半数に達した。投票率は５８・６８％で、市条例が定める５０％以上の要件を満たし、成立した。投票は賛成、反対の二者択一。法的拘束力はないが、条例は「市民、市議会、市長は結果を尊重する」と規定している。

◆沖縄に大きな勇気
　新たな騒音や事故の危険…。生じ得る負担を認めるか否か。市民の声は「ノー」だった。米空母艦載機受け入れをめぐり山口県岩国市が実施した住民投票は１２日、反対多数が確実となった。反対派市民は「無謀な計画を白紙撤回させたい」と、抱き合って喜ぶ。在日米軍再編計画に地元の声は反映されるのか。瀬戸内の基地の町が投じた一石。関係各地も注目した。今回の結果に沖縄からも「岩国市民の決断に重みを感じる」「政府は再編を強引に押し付ければ、国民の信頼を失う」などの声が上がった。

　名護市では１９９７年、普天間飛行場移設の「海上ヘリポート」の是非をめぐって市民投票をした経験がある。岩国市の市民投票を前にした今月上旬、ヘリ基地反対協議会代表委員の大西照雄さんと安次富浩さんは同市の市民団体に招かれて岩国を訪れた。

　集会などで「名護で９年間も基地建設が着工されなかったのは市民投票の力」と市民の意思表示を訴えた大西さんは、投票結果に「岩国が頑張ることが沖縄への激励にもなる。『やっても意味がない』といわれる中で意思決定をした自信は大きい」と意義を語った。

　名護市民投票時に条例請求人となった宮城康博名護市議は開口一番「『投票に意味がある』と考えた岩国市民の決断に重みを感じる。『国が決めたこと』と思わされている人たちに勇気を与えた」と話した。

　自治体議員による基地監視団体「リムピース」メンバーで、沖縄にも度々視察に訪れている田村順玄・岩国市議（６０）は、名護市の市民投票とその後の運動が、岩国の運動にも大きな勇気を与えたことに触れ、「われわれも６０年間ずっと基地被害の痛みを持っていたが、市民に是非を問うことはなかった。今回、ようやく市民の良識を示すことができた。これをどう生かしていくかだ」と、取り組みのさらなる強化を訴えた。

　辺野古沿岸案反対県民総決起大会で共同代表を務めた山内徳信さんは「基地被害はごめんだという岩国市民の本音の結果が出た。声なき人の声を取り上げるのは、民主主義社会においてはごく自然な行為」と今回の住民投票を高く評価。「政府は再編を強引に押し付ければ、国民の信頼を失う。今回の結果を真摯（しんし）に受け止めるべき」と指摘した。
　この日、神奈川県のキャンプ座間周辺で開かれた「米軍再編・基地強化反対」の集会に参加していた沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は、全国の仲間たちとともに住民投票の成功を喜んだ。「反対への投票が圧倒的な市民の意思で示された。この結果は、沖縄に限らず全国の運動に限りない勇気を与える」と話し、今後岩国、座間とも連携して力強い運動を展開していく決意を示した。