週明けに嘉手納搬入 日米両政府が米軍嘉手納基地(嘉手納町など)配備で合意した最新鋭の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)ミサイルと関連装備品が三十日から順次本島の米軍港湾施設に到着、週明けから同基地に搬入されることが分かった。在日米軍当局が二十九日、明らかにした。
那覇軍港では二十九日午後十一時半ごろ、PAC3の関連装備品を積んだとみられる民間大型輸送船が接岸していた。船首部が大きく開口、多数の軍用車両が積載されているのが確認された。船首部では制服姿の米兵ら三人が辺りを警戒した。
輸送船は全長二百メートルほど。所属は不明だが、船体には「AMERICAN」と書かれている。
日米両政府が合意した在日米軍再編の最終報告に基づき十二月末までに配備されることになっていたもので、七月に弾道ミサイル七発を発射した北朝鮮情勢などを意識し、搬入を早めたとみられる。
米軍によると、三十日朝には、那覇市の那覇軍港にPAC3の運用にあたる米陸軍防空砲兵大隊が使用する大型車両などの装備品が到着。十月二日から四、五日間、約五百台の軍用車両に搭載して本島の幹線道路である国道58号を経由して嘉手納基地に搬入する。
PAC3ミサイルと発射台も二週間以内に、米軍の天願桟橋(うるま市)に運び込む。警備上の理由から、搬入の具体的な日時は明らかにしていない。
嘉手納基地第一八航空団のダニー・ジョンソン広報局長は「国道を使った搬入は交通量が最も少ない未明の時間帯に行う。地域住民への影響を最小限にしたい」と説明している。
日米両政府は七月、米軍再編の最終合意に従ってPAC3を嘉手納基地と嘉手納弾薬庫地区に配備し、十二月末までに一部運用を開始すると発表。すでに米テキサス州フォートブリス陸軍基地から米兵約二百人が嘉手納基地に配置され、二カ月以内に残る四百人も移転を完了するという。
PAC3配備をめぐっては、基地周辺の議会や首長が「基地機能強化につながる」などと反対を表明。大量の米軍用車両が一般道路を通行することから、地元の反発が予想される。
[ことば]
地対空誘導弾パトリオット(PAC3) ミサイル防衛(MD)の主要装備の一つ。大気圏に再突入した弾道ミサイルを地上から迎撃するミサイルで、射程は20キロ程度とされる。イージス艦から発射する海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と併用すれば、SM3が上層(大気圏外)で撃ち漏らしたミサイル弾頭をPAC3が撃つ2段構えの態勢が整う。日本側も本年度から埼玉県の入間基地などに配備する予定。
まるで“戦時下”反発 最新兵器 頭越し配備/反対無視 地元怒り
【中部】「負担軽減はなされないのに、基地強化ばかりが進んでいく」―。米軍の最新鋭地対空誘導弾パトリオット(PAC3)関連装備品を積み込んだとみられる米艦船が那覇軍港で二十九日夜確認され、配備がいよいよ始まる。首長や基地周辺住民に何の連絡もないまま。中部の首長らは「これ以上の基地強化は許されない」と一斉に反発した。米軍は四、五日間で、約五百台の軍用車両を使い搬入するといい、“戦時下”を思わせる物々しい雰囲気に包まれそうだ。 配備先の米軍嘉手納基地を抱える沖縄市の東門美津子市長は、「報道が事実ならば許せない。沖縄市側に配備するといわれるが、国からは何の連絡もない。地元に情報がない中で、事が進む状況に怒りを感じる」と憤った。
PAC3と発射台は、うるま市の天願桟橋から嘉手納基地に運び込まれる。知念恒男市長は、「基地強化のために桟橋を使ってほしくない。跡地利用や基地従業員の身分など、県民が求める問題解決は進まないが、基地ばかり強化されていくことは理解し難い」と強い口調で話した。
配備反対を決議した嘉手納町議会の田仲康榮基地対策特別委員長は、「市民の目を盗んで深夜から未明にかけて運搬することは、県民の怒りを米軍が知っているからだ」と指摘。「嘉手納には爆音被害があり、これ以上の基地負担は限界だ」と語気を強めた。
「嘉手納基地から先制攻撃し、敵のミサイルは撃ち落とすということか」。同町屋良の元高校教諭知念正直さん(71)は、「嘉手納基地が戦闘態勢を構築したことでは。恐怖を感じる」と話した。
一方、沖縄市知花自治会の浦崎清子会長は、配備への賛否で悩んでいる。「基地がある以上、外国から狙われる可能性がある。無防備では危険だという意見もあり、どう対応すればいいのか」と苦しい胸中を明かした。
米軍は、軍用車両五百台で装備品を運ぶ予定。沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は、「五百台!」と絶句した。復帰直前の毒ガス移送と重ねつつも、「当時は出ていく輸送だったが、今回はミサイルが入ってくる。復帰後三十年以上たった今、歴史に逆行する軍拡だ」と批判した。抗議集会の開催を検討するという。
車列300メートルに/県警に非公式連絡
県警関係者によると、県警には非公式に「三十日」に那覇軍港に到着すると連絡があったという。具体的な時間などは明らかにされていない。
嘉手納基地への運搬については、「深夜に車両数百台に分けて、運ぶ」としているらしく、車列は最大で約三百メートルにわたるという。道路使用許可の届け出などはない。
道路交通法に違反するわけでもなく、交通量の少ない未明ということもあり、県警は交通規制などを予定していない。
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